2025年5月、米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合がいよいよ迫る中、市場では「金利据え置き」が既定路線との見方が広がりつつあります。
トランプ政権による利下げ圧力、インフレの鈍化傾向、そして4月の堅調な雇用統計――複雑に絡み合う経済指標と政治的要因の中で、FRBが下す決断はドル円・株価・金利・ゴールドにどう影響を与えるのでしょうか。
本記事では、Bloomberg発の最新見通しをもとに、FOMC政策の焦点を明快に整理。
さらに、USD/JPY・S&P500・米10年債・ゴールド(XAUUSD)の日足チャートを交えて、トレーダーが“今週仕掛けるべきか見送るべきか”を判断できる分析と戦略を提示します。
第1章|FOMCの基本情報と今回の注目ポイント
🔹 FOMCとは? ── アメリカの金融政策を決定する中枢会議
FOMC(Federal Open Market Committee/連邦公開市場委員会)は、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利(フェデラルファンド金利)を決定する最重要会合です。
年に8回、ワシントンD.C.で開催され、インフレ、雇用、景気の状況を踏まえて、次のアクション(利上げ・据え置き・利下げ)が決定されます。
このFOMCの結果は、ドル円や米国株、さらには金やビットコインまで幅広い資産クラスに影響を与えるため、世界中のトレーダーや投資家が注目しています。
🔹 今回(2025年5月)のFOMCスケジュール
- 開催日:2025年5月6日(火)〜7日(水)[日本時間では5月8日(木)未明]
- 声明発表:5月8日(木)午前3時(日本時間)
- パウエルFRB議長の会見:同日午前3時30分から
🔍 2025年5月FOMCで注目されるポイントは?
今回のFOMCでは、「金利据え置き」が有力視されています。
ただし、“据え置き”という結果だけでなく、パウエル議長の会見トーンや先行きの金利見通しに、より一層注目が集まっています。
主な注目材料は以下の通りです:
注目点 | 内容 |
---|---|
✅ インフレの鈍化 | 3月PCEコア価格指数は前月比0.0%と予想を下回る結果に |
✅ 雇用は堅調 | 4月非農業部門雇用者数は+17.7万人で底堅い |
✅ トランプ大統領の圧力 | FRBに対し繰り返し「利下げ」を要求中(選挙戦略も意識) |
✅ 金融政策の難しさ | インフレと景気後退リスクの“板挟み”で、政策判断が難航中 |
このように、「据え置き濃厚=材料出尽くしでリスクオン」とは単純に言えない構造があり、
声明文の文言や、会見時の「データ次第」「慎重なアプローチ」といった表現が、市場の期待を揺さぶる可能性が高いと言えます。
📌 市場関係者の見方(Bloombergより)
ブルームバーグ・エコノミクスのアナリストは以下のように指摘しています:
「パウエル議長は市場の利下げ観測をけん制し、あらためて“物価安定が最優先”との姿勢を強調するだろう」
Bloomberg
この指摘が示すように、利下げ期待を過度に織り込んだ市場に対し、冷や水を浴びせる可能性も否定できません。
第2章|通貨ペア別にFOMCの影響をどう見るか?
🔹 ドル円(USD/JPY)|トレンド転換の兆しも、FOMCが明確な方向を与えるか?

ドル円は現在、ダウントレンドからの転換点に差し掛かっている極めて重要な局面にあります。
2025年5月4日時点の日足チャートでは、5日移動平均線と20日移動平均線がゴールデンクロス間近。
8時間足ではすでにゴールデンクロスが成立しており、短期勢による“先回り買い”も見られます。
特に注目されるのは146.00円ラインです。
- 4月3日の終値と重なり、かつてはサポートとして機能
- 4月10日にはあっさり割り込み
- 現在はレジスタンスとして意識されており、反発かブレイクかが焦点
🔍 FOMC後のドル円相場:2つのシナリオ
シナリオ | 内容 | 想定値動き |
---|---|---|
✅ タカ派トーンが維持された場合 | 「利下げ急がず」や「インフレとの戦い継続」などの発言が出る | → 146.00突破 → 147円台へ上昇試す展開も |
✅ ハト派サプライズ(慎重姿勢強調) | 景気への配慮を強調 or 「利下げ選択肢にも言及」 | → 144円方向へ反落 → 移動平均線下割れのリスク |
結論として、FOMCが今の「方向感のないチャート」に決着をつけるきっかけになる可能性が高いというのが現在の見立てです。
ユーロドル(EUR/USD)|サポート割れの瀬戸際、FOMCが引き金になる可能性も

ユーロ圏では、直近のCPI(消費者物価指数)が横ばいとなったものの、基調的な物価指数(コアCPI)には上昇圧力が残っています。
実際、チャートで見ると2025年初以降、ユーロ圏CPIは3か月連続で上昇しており、129台に迫る勢いを見せています。

この背景から、「6月のECB利下げ観測」が根強く残りながらも、CPIの再加速がその期待をやや冷やす構図となっています。
一方、FOMCが据え置き・タカ派姿勢を維持すれば、金融政策のスタンス格差が改めて意識され、ユーロ売り圧力が再燃する可能性もあります。
現在のEUR/USDは1.12810のサポートと20日移動平均線を同時にテスト中。
ここを下抜ければ1.10500付近までの下落も視野に入り、FOMC内容がブレイクの引き金となる可能性があります。
- 米金利上昇 → ドル買い加速 → サポート割れへ
- ハト派サプライズ → ユーロ反発も、上値は限定的か
🔹 その他クロス円(豪ドル円・ポンド円など)にも警戒
豪ドル(AUD)やポンド(GBP)など、クロス円通貨はリスク感応度が高く、FOMCで株価が荒れれば円買いが入りやすいという特徴があります。
特に豪ドル円は、S&P500や中国株との相関が強く、FOMC発表後の「株価急変→クロス円巻き込まれ」パターンには要注意です。
✅ 中間まとめ:通貨ごとの注目ポイント
通貨ペア | 注目ポイント |
---|---|
USD/JPY | 146円を挟む攻防。FOMCが方向感を決定づける可能性 |
EUR/USD | ECBとのスタンス差が鍵。ドル高継続か反発かの岐路 |
AUD/JPY, GBP/JPYなど | 株価と連動性高く、FOMC後のリスクオン・オフ次第で振れやすい |
第3章|発表結果にどう反応する?FOMC後の戦略と注意点
🔹 市場は“きっかけ待ち”の状態。動き出しの方向を見極めろ
現在の為替市場(特にドル円・ユーロドル)は、テクニカル的にもトレンド転換の瀬戸際にあり、FOMCの結果がその引き金になる可能性が高いです。
つまり、「材料出尽くし→逆張り」ではなく、“本格始動の初動”を捉える場面と捉えるべきでしょう。
🔍 判断のフレームワーク:3ステップで戦略を立てる
ステップ | 判断項目 | 意味するもの |
---|---|---|
① FOMCの内容 | タカ派 or ハト派(サプライズ度) | 金利差と政策姿勢の方向性を確認 |
② 初動の値動き | 高値・安値のブレイク有無 | 市場の“受け取り方”を測定 |
③ 移動平均線や節目 | サポート・レジスタンスとの位置関係 | 押し目か崩れかの最終判断 |
🔹 ドル円(USD/JPY)の戦略ポイント
- 146.00円ブレイク:タカ派維持なら上昇トレンドへの移行シナリオ
- 反落→143円台へ戻る動き:ハト派と受け止められた際の失望売り
- 注目ライン:5日・20日移動平均線のクロス完成/未完成の分岐
🔹 ユーロドル(EUR/USD)の戦略ポイント
- 1.12810割れ:テクニカルブレイクで1.10500まで下落シナリオ浮上
- 下値支持での反発:ECB利下げ観測が再燃しない限り上値は限定的
- トレード指針:移動平均線の実体下抜けに注意
🔹 株価(S&P500)や金(XAUUSD)の“間接的影響”にも目を向ける


- S&P500は200日線が上値抵抗:FOMC後に「売り圧力」が強まる可能性あり
- 金(XAUUSD)は20日線の攻防中:割れると3,135→2,980の下落も現実味
- 特にリスク資産全般が売られる展開なら“円高リスク”も同時に台頭
✅ 注意点:FOMC直後の“だまし”に警戒
FOMC発表直後は一時的な“ノイズ”が発生しやすく、第一波で飛び乗るのはハイリスクです。
推奨されるのは、以下のような“確認型トレード”です。
- 第1波の後の調整を待ってエントリー(押し目・戻り)
- ローソク足の確定や移動平均線の位置で方向感を確認
- 翌日以降、パウエル議長の発言に市場がどう継続反応するかを追う
💡 補足:市場のコンセンサスと異なる動きが出たらチャンス
「据え置き」はコンセンサスです。
よって、もし想定外のトーン(利下げ示唆・インフレ鈍化強調)などが出た場合は、市場のポジションが一気に巻き戻される可能性があります。
この“意外性”には最も大きなチャンスとリスクが伴うため、注視すべきです。
第4章|ファンダメンタル×テクニカル×センチメントで相場を読む
🔹 ファンダメンタル分析:FOMCと各国政策の“ねじれ”に注目
- 米国(FOMC):金利は据え置き見込み、インフレは鈍化傾向ながら粘着性あり
→ パウエル議長は「利下げには慎重」姿勢を継続する可能性が高い - トランプ政権の関税政策:物価押し上げ圧力に転じる懸念が根強い
- ユーロ圏:ECBは6月利下げ観測が優勢だが、直近CPIは上昇基調
📌 注目点:
主要中央銀行間で政策の方向感にギャップが生じており、通貨間でトレンドが発生しやすい構造になっている。
🔹 テクニカル分析:分岐点に到達したチャートが多い
✅ USD/JPY(日足)
- 20日線・146円ライン:上昇転換の起点か、再下落かの判断基準
- 8時間足ではGC完成済み、上目線に傾きやすい構造
✅ EUR/USD(日足)
- 1.12810の節目&20MA:下割れなら1.10500までの調整に注意
- 横ばいながらも失速気味
✅ S&P500
- 200日線が目前の抵抗帯:FOMC通過後に反落すればリスク回避ムード拡大も
✅ ゴールド(XAU/USD)
- 20日線タッチ+ギャップダウンの存在:売りが優勢になりつつある兆し
- 下抜け時は3,135、2,980が視野
✅ 米10年債利回り(US10Y)
- 4.165%がサポート帯、4.400〜4.500が抵抗帯
- 上にも下にも「決着がついていないペナント状の形状(長期足)」
📌 注目点:
テクニカル的には「方向感が出始める直前」にあるチャートが多く、FOMCがブレイクの契機となる可能性が非常に高い。
🔹 センチメント分析:市場心理は「不確実性警戒型」
- 市場は明確なトレンドを待ちつつ、“サプライズ”に過敏な状況
- SNSやニュースでは「トランプ政権の関税」がインフレ見通しを不安定化するとの声
- 株・金・債券の相関が崩れており、「安全資産買い or リスク回避」の明確な判断がしづらい
📌 注目点:
センチメントは非常に“警戒モード”にあり、FOMCの「一言一句」に過剰反応する可能性がある。
発言のトーンやニュアンスが市場を揺らすリスクを忘れてはならない。
✅ 3つの視点の交差点に“トレードチャンス”あり
F(ファンダ)=金融政策の分岐
T(テクニカル)=節目到達のチャート構造
S(センチメント)=不確実性警戒で方向性を欲している
この3つが重なった今、「ブレイク確認後の順張り」が最も優位性のある戦略になり得ます。
トレードの鍵は、“無理な予想”ではなく、反応を見てからの対応です。
第5章|FOMC通過後の市場と向き合うために──トレーダーへの提言
2025年5月FOMCは、市場予想通りの金利据え置きが濃厚と見られています。
しかし、今回のFOMCが持つ真の意味は「現状維持」ではなく、“次の一手をどう織り込むか”という心理戦にあります。
🔹 「動かない政策」がもたらす“市場の動き”
- 金利は据え置きでも、市場は動く。
- パウエル議長の発言や記者会見でのトーン(タカ派/ハト派)が主役となり、通貨・株・金利市場に強いリアクションが出るタイミングです。
- とくに今回は、主要チャートが節目に迫っているため、少しのきっかけでも大きなブレイクや反転を誘発する地合いといえます。
🔹 トレードにおける3つの提言
✅ 1. ポジションを軽くして臨む
FOMC前後は、“振り落とし”の時間帯です。ノイズ的な動きに巻き込まれないよう、ポジションは軽めに構え、“動いたあとに乗る”戦略が基本です。
✅ 2. 節目と移動平均線を必ず意識する
提出チャートでも明らかなように、USD/JPYの146円ライン、EUR/USDの1.128サポート、S&P500の200日線、XAUUSDの20日線など、多くの銘柄が分岐点にあるため、これらの“割る・超える”というサインをトリガーに戦略を立てましょう。
✅ 3. FOMC“以後”の継続反応を追う
FOMC当日の動きだけで完結することは稀です。
翌日のローソク足形成、東京・欧州時間の流れを追うことで、市場の本心を見抜くチャンスが広がります。
💡 まとめ:FOMCは「スタートの合図」
FOMCが“方向感のない市場”に火をつける可能性は高く、「どちらに動くか」ではなく、「動いたらどうするか」を準備することが最大の武器です。
トレーダーに求められるのは、“読み”よりも“反応”。
今は焦って結論を出すのではなく、FOMCというトリガーを使って、波の初動に乗る柔軟性が求められます。